今と昔が重なるとき
私がはじめて歴史を身近に感じた体験は、小学生のとき、たまたま家族でドライブに出かけたときに立ち寄った真田本城跡。
雨上がりで霧立ちのぼる城跡には、枝垂れ桜が咲いていました。
ふと日が差し込んだと思い、城下を見下ろすと、街道が見渡せました。
その光景は、幼心に現代の景色とは思えない、自分が違う時代へ飛んでいってしまったのではと思うほど、当時の私にとっては衝撃的でした。
なんとなく目の前に広がる景色と、五百年ほど前の時代(とはいえ、当時は五百年前がどんな時代だったか知らなかったが)とが、重なって見え、鳥肌が立ち、帰路についても目に焼き付いて忘れられなかった。
「きっと変わらない景色なんだ。時が経っても変わらない景色があるんだ。」
その時から歴史は、昔のこと、過去の一点の事ではなく、今につながる地続きであると思うようになり、どこへ行くにも昔の面影を探すようになりました。
書物に書かれている遠くの歴史上にいる人たちと、同じ景色を眺め、自然環境に身を置いて、私の中にある何かが反応する楽しさを知ってしまった瞬間でした。
史跡はその周辺環境から当時のなごりを感じさせ、近くの資料館に展示されている史料から当時の人々の様子を思い浮かべ、それらが脳内で合わさると何もないように見える場所にも面影を感じる。
そしてその感覚は、かつてを生きていた人たちと対話をしているようで楽しいので、あちこちへ足を運んでは、ぼんやりと眺めたりしています。