【上丹生薬師堂】これぞ村堂・村人たちの祈りの空間

独特のオーラを醸し出す薬師堂

「湖北で、どこかオススメのお堂お寺を教えてください」

いつもどこと言おうか迷うのですが、何度かお越しいただいている方には「長浜って観音さんだけでなく薬師さんも多い地域なんですよ」とお伝えしています。

その時に北部地域でご紹介するのは、長浜市余呉町の上丹生薬師堂です。

 

まず、薬師堂がカッコいいのです。

滋賀県指定有形文化財に指定されている上丹生薬師堂は、棟札、奉加帳の版木などから宝永5年(1708)に建造されたとされています。

一般的な仏堂とは趣が異なり、切妻造、妻入で奥行きが長く、身舎と庇によって構成される二面庇形式の仏堂です。

柱が 太く、大梁、繋梁による架構で、束を立て屋根を造り、装飾性を排した素朴な造りにグッときます。

内部は正面から奥行き五間を広い一室の外陣とし、その後方二間の中央間を内陣としています。

内陣は周囲を間仕切り、入母屋造、妻入の一間厨子に秘仏の薬師如来を安置し、厨子を守るように日光月光両菩薩に十二神将など多くのホトケさんがいらっしゃいます。

ザ・地域信仰なお供え

堂内には民衆の様々な信仰のかたちを知ることができます。

  • 毛髪:女性が病気の時、快復を願って髪を切って供えたもの。
  • 穴あき石:目、耳、鼻、口の病気又は願いが通じるように河原で拾って供えたもの。
  • 箸:子供の歯が痛むとき、借りて噛まし、治ると12膳作って返納する。
  • 毬:養蚕が盛んな時、蚕が病気に躍らず、生糸の生産が上がるよう絹糸で作ったものを供えたもの

堂内の梁には昔の落書きがあります。

なんともほんわかしますね。

イガイガ螺髪に鋭いまなざしの秘仏本尊

この薬師堂は、かつて八幡神社(薬師堂から階段で登ったところ)の神宮寺であったとされています。

50年に一度、開帳される秘仏本尊の薬師如来は、国の重要文化財に指定され、背面には「薬師如来造立、建保三年四月十七日」(鎌倉時代)の銘文があります。

頭体部から両足先からほぞまでヒノキの一材で両肩から腕、袖までをふくむ体側部を左右に矧ぎつけています。

目ヂカラ、体つき、赤みがかった体の全てから秘仏たる霊威を放っていましたが、奥行きが浅い量感を抑えた体部や簡略化された衣文表現など、素朴な趣を示し、この地方の仏師によって制作されたとされています。

イガイガ螺髪で、キリッとした目鼻立ちに、シャープな衣と鋭い印象と、ほんの少し厚みある胸とお腹が親しみやすさを感じさせてくれます。

定朝様のまんまる顔な御前立御本尊

秘仏本尊が安置されている厨子の前に御前立の薬師如来さんがドンと迎えてくださいます。

2019年度は修復中で、お留守でしたが、2020年春に薬師堂にお帰りになりました。

丸顔にうすくちいさな唇が可愛らしく、長く引かれた両目の美しさに心をわし摑みされます。

修復のため、内陣から出られた時に横顔を拝しましたが、鼻の稜線が美しい。

眉のラインが柔らかく、平たくも広い耳が優しそう。

ぴよ口が可愛らしく、優しい眼差しにドキドキします。

完全に上丹生の薬師さん方に一気に心奪われましたが、深呼吸してほかのホトケさんたちもゆっくりと拝観させていただきます。

からだに対して大きなあたまと微笑みが特徴的

よだれ掛けをつけたこちらの方。

地元の方にお聞きするとお地蔵さんとして祀っているとのこと。

それにしてもいい雰囲気のお方。

神像系にも思えるようなと思い、特別に許可をいただき、よだれ掛けを上げてみると、

首元には喉筋や肋骨が見え、襟が立ち、両手は数珠を持っていました。

地蔵菩薩として伝わっているものの、長浜市指定文化財としては「木造僧形坐像」としています。

薬師堂が八幡神社の神宮寺であったことから、僧形八幡菩薩だったのでは?など推測はされるものの、特定に至っていません。

東林寺の観音さんにも似た聖観音菩薩坐像

肩から結珈践坐した足下までのシルエットがなんとも言えない安定感がある観音さん。

浅く線状的な衣文線に、木目を見せる素木造は、秘仏本尊や翌年造られた菅並にある東林寺観音堂の聖観音菩薩立像にも似ているところがあります。

個人的には特に肩のあたりが東林寺の観音さんに似ているなと。

7人の小人のような十二神将

薬師さんたちの眷属・十二神将ですが、上丹生薬師堂の十二神将はなんともディズ●ー調なつぶらな瞳なのです。

日光月光さんに、持国天、多聞天さんも傷みが激しく、なんとかしたいものの、薬師さんを修復したばかりなので、資金がない状況。

心苦しくも、そのままの状態です。

これからお参りの方はぜひ、お賽銭箱にお気持ちご支援していただけると有り難いです。

地元でもお会いすることができなかった秘仏本尊

「ほんまに、あのお厨子の中にお薬師さんいらっしゃるんやろか?だって50年も誰もみていないんやで!?」

 

長浜へ来てまもない頃、上丹生に住む方から聞いたお言葉。

確かに50年も目にしていなければ、そう思うのも納得です。

 

「あ!こんなシュッとして男前な方やったんね」

と言いながらお前立さんが座っていらっしゃった台に肘をつき、楽しそうにお話する奥様方。

その後ろ姿のなんと可愛らしいこと。

お薬師さんの表情もなんとなく柔らかく、幼子のようにも見えてきてしまうほどに、お内陣の空気はあたたかいものに。

仏像が村のホトケとして存在しているだけで、こんなにも表情が変化して見えるものなんだと実感すると同時に、こんな光景をずっと見ていたいと思いました。

 

※上丹生薬師堂は写真撮影禁止です。取材にて特別に許可をいただき撮影、掲載しております。

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