【大聖寺不動堂】無事、修理へ
今から3年前、2019年のこと。
大聖寺不動堂の方から仏像の修復資金について、ご相談がありました。
長浜市指定文化財の不動明王坐像を修理するにあたり多額の費用がかかるが、大聖寺不動堂をお守りしているのは大門町内の4軒のみ。
同じ町内でも、宗派のちがう方々の理解を得て修復費を集めるのは困難な状況でした。
まずは地元以外から広く集めることをして、大門町の方々にも徐々にご理解いただきたい。
町内でお不動さんの存在は知っていても、みたことがないという方にお会いしていただきたい。
そんなお話を聞きました。
クラウドファンディング、昔からの振り込み票での寄付、特別公開などいくつかの方法がある中で、遠方からのご支援は振り込み票・口座振込にし、直接のご支援は特別公開日を設けて行うことに。
すぐに資金を集めるというよりは、資金集めに時間は少しかかるものの、町内と町外の人との関係を築いていくには良いやり方にしました。
▼寄付を呼びかける記事▼
特別公開をしたことで、県内外からたくさんの方がお越しになり、その中に地元大門町にお住まいの方の姿も見受けられました。
特別公開や募金箱、銀行振込などで、多くの方からご支援をいただいたものの、この年だけでは修復費に届きませんでした。
堂守さんのモチベーションが心配でしたが、来年も特別公開をして少しずつでも集めていくとの意気込みを聞き、安心しました。
2019年の特別公開は浅井歴史民俗資料館にて展示をしている関係で、長浜市の歴史遺産課の方々が不動堂での解説や駐車場の整備を行いました。
2020年の特別公開は自分たちで運営しなくてはいけないので、4軒の方々では大変だろうと思い急ぎ向かうと、初めてお会いする方々が駐車場の整備をされていました。
同じ大門町にお住まいの方々が進んでお手伝いをしてくださっていたのです。
駐車場だけでなく、受付にも地元の応援があり、賑やかでした。
2020年もコロナ対策をしながら、特別公開を続けてきた大門町の皆さん。
その後、どうなったのだろうかと心配していたものの、修復することが決まったとご連絡があり、思わず「やった!!」と手を挙げました。
また2021年も特別公開を行うと聞き、様子を伺いにお参りへ。
外からの拝観者と地元大門町の方々はどのくらいお越しだろうかと、ドキドキさせながらお伺いすると、拝観者の方も地元の方もたくさんいらっしゃいました。
「よう、きたな」と照れ笑いしながら堂守さんがお声掛けくださり、お不動さんにご挨拶する前から雑談に盛り上がってしまいました。
「いい報告がある」と言われ、お堂へ上がると「バラバラになって苦労した大般若経あったやろ?修理したで」とおみせいただいた。
2020年の大般若経転読の時はバラバラになってしまっていた大般若経も、転読がしやすくなっていました。
「特別公開はこれからもぜひ続けてほしいですね」とお伝えすると、
「お不動さんはしばらく修理に行かれてしまうけど、これからは毎年公開の機会を作ろうと思う」と前向きなお言葉が。
そして修理へ
そして2022年6月上旬にお不動さんは修理へと向かわれました。
これから2年ほどかけて修理を行うとのことです。
ついつい修復費を集めることが目的化してしまいがちですが、大切なのは「これからどのようにお守りしていくか」を考えること。
そしてそれを考える人を少しずつ増やしていくこと。
目に見えない意識の変化を起こすことは簡単ではありません。
小さな刺激を在所にもたらす。
本件で言えば特別公開という内外が交流する機会であり、人の往来をみて地元が興味をもつということ。
不思議に思った地元の人が様子を見に行ってみたら、あちこちからお越しの拝観者で賑わっている。
不動明王を必要としている人がいると気がつくこと、そして自分も関心をもつこと。
少しの動きで、少しの変化、そしてそれは継続されると徐々に大きな影響を与えていくのではないでしょうか。
このような動きがあちこちで持続的に行われるようになってほしいと思います。
そして、できることなら、なぜそのようなことを行っているのか。
その背景も合わせて、地元の方々は伝えていくこと。
拝観者も地方における文化財の現状を知り、それらを愛する者として一緒に考えていただきたいと思います。
最後に、ご協力くださいました皆さま、ありがとうございます。
▼中日新聞 2022年6月7日付けにて掲載されました。
「不動明王坐像 悲願の修復へ 長浜・大聖寺 地域が中心、費用を確保」
https://www.chunichi.co.jp/article/484594