上原美術館「無冠の仏像」展は無指定文化財から指定文化財を考える

上原美術館

https://uehara-museum.or.jp/exhibition/past-exhibition/mukan-no-butsuzo/

上原美術館の無冠の仏像展へいってきました。

無指定の仏像だけを展示した展覧会でしたが、目の前におわす無冠の仏像と向き合いながらも、指定文化財のことをも語りかけてくださる不思議な空間でした。

 

観覧すると、指定の有無だけでは仏像の魅力は、はかれないということがよくわかります。

何かと比べて劣っているとか、優っているとかそういうことではなくて、人が多様であるように、仏像も多様だし、それぞれに個性と役割がある。

普段光が当たらない無指定の仏像を知ることで、指定文化財を知ることができると思います。

そして、今は国宝、重文に指定され、特別展で脚光を浴びる仏像も、もともとは指定の無いところから出発し、調査、研究がされ、展示され、広く評価され、徐々に認められていきました。

ポテンシャルをもちながらも、まだまだ調査、研究、評価がされていない仏像がたくさん存在していること、そして様々な事情で人知れずひっそりと祀られている仏像もいることを観覧された方々は知ることができたのではないでしょうか。

 

今年度は大学生をフィールドワークに連れて行ったりしている私ですが、はじめの頃、彼ら彼女らからは「文化財=国宝・重文だと思っていた」と聞き、驚きました。

確かに、特別関心がない限りは国内の有名スポットや国立博物館レベルで文化財と対面するので、その認識になってしまうことも納得がいきます。

もっと広く社会に文化財のことを理解されるよう、発信していくことが大切ですね。

 

文化財について少しでも関心をもっている方には、ぜひ「無冠の仏像」展の図録を読んでほしいと思います。

担当学芸員の田島さんの熱意が溢れる文章に読んでいるだけで、私もできることをしていかなくては!ととても励まされました。