特別展「旧嵯峨御所 大覚寺―百花繚乱 御所ゆかりの絵画―」内覧会レポート

先日、東京国立博物館平成館にて特別展「旧嵯峨御所 大覚寺―百花繚乱 御所ゆかりの絵画―」の内覧会にご招待いただきました。

※投稿写真は全て内覧会にて撮影しました。

 

大覚寺について

平安時代初期、嵯峨天皇は大覚寺の前身となる離宮・嵯峨院を造営し、空海の勧めで持仏堂に五大明王像を安置します。

その後、貞観18年(876)に嵯峨天皇の皇女・正子内親王の願いにより寺に改められ、大覚寺が開創されました。

そして大覚寺は令和8年(2026)、開創1150年を迎えます。

その歴史ある寺宝を観覧してきました。

 

大きな五大明王像に圧倒される

まず、仏像好きとしてはやはり五大明王像に目がいきます。

第1章の展示室へ入るとまず目に飛び込んでくるのが大きな五大明王像(大覚寺蔵)。

もとは清涼寺の五大堂に安置されていたそうですが、明治初期に大覚寺へ移されたそうです。

またお像だけでなく像内納入品 (前期と後期で展示替えあり)も見逃せません。

 

明円の五大明王像

続いて、大覚寺本尊の明円作・五大明王像(大覚寺蔵)。

これらの五大明王像は平安時代後期に後白河上皇の御所で作られた仏像で上皇、天皇家ゆかりの仏像として作られたそうです。

明円は天皇家や宮廷貴族の仏像を数多く手がけたことが記録上知られていますが、現存している作例で現在確認されているのは大覚寺の五大明王像のみということでした。

平安時代から鎌倉時代へと時代が移り変わっていく転換期であり、平安時代の優美さと鎌倉時代の写実性、力強さの両方がみられます。

展覧会ですと横顔を拝することができるので、それぞれの表情を細かくみることができます。

※金剛夜叉明王像の二眼の目力に惹かれました

※軍荼利明王の首にかかる蛇が向き合っていてかわいい

 

豪華絢爛の障壁画に囲まれる

今回の展覧会では大覚寺に伝わる約240面に及ぶ襖絵、障子絵などの障壁画のうち123面(前期100面、後期102面)が公開されます。

狩野山楽の「牡丹図」などの襖絵に囲まれる空間は圧巻でした。

床にリフレクションしてきれい…

第4章は展示室内が一般観覧の方々も写真撮影OKエリアということで驚きです。

 

これらの障壁画で個人的に惹かれた作品は下記の通り。

・正寝殿「松鷹図」狩野山楽筆(大覚寺蔵) ※前期

どっしりと太い幹の松。

そこに止まる鷹の美しさ、白いふわふわの幼鳥を見守る母鷹のどことない柔らかさ、キジなどの鳥を捕えた鋭さとそれぞれの美があったように思いました。

 

・正寝殿「野兎図」渡辺始興筆(大覚寺蔵)

言わずもがなうさぎのキュートさ。

上を向くうさぎが特に可愛らしい。

 

・正寝殿「芭蕉図」渡辺始興筆(大覚寺蔵)

正寝殿のまわりの杉戸絵のひとつ。

大胆な構図に緑の濃淡から芭蕉の生命力が伝わってきました。

 

・宸殿「牡丹図」狩野山楽筆(大覚寺蔵)

金鶏のような母鳥の背中には、ヒナが逞しく羽を広げて大きな口を開けてピーピー鳴いている。

端っこにコマドリの姿も。

優雅のなかにほっこりの溶け込み具合が絶妙です。

 

・宸殿「柳に燕図」(大覚寺蔵)

そよそよとゆれる柳ではなく、突風が吹き激しくうねる柳と風に飛ばされているツバメ。
優雅な襖絵が続くなかで、この世界だけ嵐のような激しさに不思議に思いました。

 

文化財を守りつなぐ思い

大覚寺障壁画は、平成28年(2016)から令和11年(2029)までの14か年の計画で継続して修理が行なわれています。

今回、東京での障壁画展示が可能となったのも修理の成果の一つです。

展示の最後に大覚寺の寺宝の保護、修理についてのパネルがありました。

その横には「賛成帖」(大覚寺蔵)がありました。

これは後宇多天皇600年遠忌を迎えるのにあたり、龍池密雄門跡が心経殿再建を願い作成したもの。

富岡鉄斎や竹内栖鳳など賛成する名高い画家の署名と捺印がありました。

多くは語らずともこのパネルと「賛成帖」から大覚寺、そしてそこに心寄せる人々の文化財を守る思いを強く感じました。

 

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特別展「旧嵯峨御所 大覚寺―百花繚乱 御所ゆかりの絵画―」
場所:東京国立博物館平成館
会期:1月21日(火)〜3月16日(日)
※会期中、一部作品の展示替えがあります
公式HP:https://tsumugu.yomiuri.co.jp/daikakuji2025/

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